アップデートする学校事務職員

2050年学校事務職員への伝言

18時限目:アップデートする学校事務職員:自主研究会「学校建築研究会」のこと

①1995年ごろ、学校事務職員のU君と友達になった。「友達の定義って何だ?」と言われると、「うーん。一緒に遊べる人のことかなあ」と答える。お互い知ってはいた。しかし地区が違うのでそれほど親しくもない状態だった。お互い県事研の役員になったことで、お互いのことが分かり距離が近くなった。それはお互いがアップルコンピュータマッキントッシュ利用者ということがわかったからだ。1995年はマイクロソフトのウインドウズが発売された年だ。しかしわれらはMac党だったのだ。私たちはその後、東京幕張メッセで行われた「アップルフェア」へ一緒に行く仲になった。

②U君は司書資格を持つ学校事務職員で、その発想と行動は、図書館的なのだ。学校事務の仕事が徹底した分類と活用・保管・保存なのだ。そして、当時私が興味を持っていた教育条件整備の中で、教育環境、特に校舎や施設などのハード部門に、同じように興味を持っていた。教室の引き戸は安全なのか、とか、学校のカギの分類保管はこれでいいのか、とか、学校建築の設計はこれでいいのか、とか話題になった。こういった話題は事務研でも組合事務職員部でも話されることはなかった。だから二人で「学校建築研究会」を作った。新しい学校が改築されたら見に行こう、とか、特色ある校舎があるみたいだから見に行こう、とか、興味関心のまま活動した。東京で関東大震災のあと、日本で初めて鉄筋コンクリートの小学校が建設されて現在も使われているらしいから、関東ブロック事務研の研究会の後に見に行こう、とか、そんな活動をしていた。

③校舎建築に興味のあった私は後日、「赴任してみたい中学校」に赴任することになった。おお~。これこそ神の思し召しだ~。興奮した。それは、東筑摩郡O村にあるT中学校だ。この学校の校舎は「建築学会賞」を受賞した校舎で、校舎の中心は情報センターという図書館が占めている。1975年ころの設計で当時としては、ぶっ飛んだ発想の校舎なのだ。生徒たちが情報センターの図書を活用し、コンピュータ室のパソコンを活用して、学習に必要な情報を手に入れる。情報センターの閲覧テーブルで、グループで話し合いや作業を行う。新しい教育の姿を求めて設計された校舎なのだ。活用は教員の力量に任せられることになる。

④このハード部分(施設など)が教育方法を決めるか、という話は9時限目「教育条件はハードウエアだけか」で書いた。そうなんだ。施設の活用は教員の発想と教育技術にかかっているのだ。残念ながら使いこなした教員は少ないようだ。調べ学習は次の教育課程の改正まで待たねばならなかった。

⑤私が赴任したのは2005年。すでに建築から30年が過ぎていた。しかし、その建築コンセプトは変わっていない。学校事務職員として、T中学校のハード部分の改造を予算化していった。まず、校舎の中心にある情報センターの書架だ。建築当時の書架はスチール書架でグラグラしている。地震でもあればドミノのように倒れていくだろう。これを木製書架に取り換えて地震が起きても転倒しないように床に固定した。情報センターの隣にある英語LL教室は利用されずコンピュータ室で英語教育が利用できるため、LL施設を全面撤去して、多目的教室に改装した。学校トイレは、施設管理員さんと共同作業で便器にナンバリングして、修繕等の利便性を図った。(生徒から何番の便器がおかしいと連絡されたら、故障した便器が分かるのですぐ対応できる)。普通教室が3階にあったため夏期は教室内が高温になったことから、扇風機は設置してあったが、根本的な解決にならなかった。それで、赴任2年目に、全普通教室の室温を記録してもらい、クーラーの設置が可能かどうか教育委員会と予算折衝した。赴任3年目も夏期の室温記録をデータとして予算折衝し、翌年クーラー設置の予算が通過した。2008年のことだ。私は異動となったため後任のO君にこのことを事務引継した。

⑥今度の私の異動先はM市K小学校という大規模校だ。このK小学校の普通教室には扇風機もなく、PTA会計で扇風機を買う(PTAが寄付するということらしい)、という信じられない場面に遭遇した。前任校とのこの落差に全身から力が抜けたのを覚えている。それから10年後、多くの学校でクーラーが設置されるようになった。

⑦これは小さな町村と大きな市の教育条件整備の差だと思う。それでも学校事務職員はできることを発見し、教育条件の整備を目指したいと思う。

⑧2009年に県事研の研修大会分科会でU君と発表した資料で、私が担当した部分をリンクしましたので、良かったら見てください。

2009年「新しい学校施設・設備(学校建築)の考え方について」 - 学校事務職員Hの仕事(1997~2016) (hatenablog.com)