アップデートする学校事務職員

2050年学校事務職員への伝言

17時限目:アップデートする学校事務職員:現職学校事務職員へプレゼンする

 17時限目は、長野県事研の秋の全県研修大会でのプレゼンについて書きます。

①2021年の新型コロナウイルスがまだ蔓延している時の研修大会です。当然というか、全員集合は難しいためオンラインによるビデオ講演でした。県事研から講演の依頼があり、専門家たちにお願いしていた全体講演に元事務職員の「えっ、私でいいのか?」というのが正直な気持ちでした。

②現職相手となると、新人からベテランまで経験年数の幅があり、そして学校事務職員の職業意識度も経験年数に関係なく幅がある。15時限目の大学生、16時限目の新人学校事務職員に行ったプレゼンはそれなりに焦点を絞りやすかった。それを考えると、現職600人相手に「何を伝えたいか」を決めないと話が散漫になってしまう恐れがあります。

③この講演はすでに退職している私の「学校事務職員としての最後の仕事」なのか?と思いました。定年退職したにもかかわらず、ウジウジと「学校事務」に関わり続けている私。そんなに私の仕事は不完全燃焼だったのか?学校での仕事はそれなりに完結したはずだ。事務研にも組合事務職員部にもそれなりの貢献をしたと思いたい。それでも不完全燃焼なのか?そうやって自問自答を繰り返すうちに、これは「DNAを残したい」という生物学的な本能ではないのか?と思うようになった。

④「アイデンティティ概念」を提唱したアメリカの心理学者・精神分析学者 E・H・エリクソン の心理発達理論の第7段階でいうと、第7段階(壮年期)40才~65才は次世代を育てる世代で、そのことによりアイデンティティを再確立させる世代だという。それがない場合は自己満足や自己陶酔に陥りアイデンティティクライシスになるという。私は仕事で「次世代を育てていない」ので、欲求不満だったのかもしれない。確かに。部下がいるわけでもなく、事務研でも組合事務職員部でも、好きなことを言ったり書いたりしてきた。自己満足の世界だったと思う。さて、そんな個人的なことはどうでもいい。全体講演の見取り図を考えよう。

⑤理科系学校事務職員としてできるだけ「学校事務」を科学的に考えてみたい。先輩事務職員たちが築いてきた「長野県の学校事務研究」がある。そして自由な個人研究を許してくれた組合事務職員部がある。私は組合の教育研究集会で自分の実践と個人的な屁理屈のレポートを毎年発表し続けてきた。それを広い心で聞いてくれた学校事務職員の仲間がいたことを思い出した。(2005年の教研集会松塩筑支部で『市町村合併と学校事務の共同実施』という現状分析レポートを発表し、これから学校事務の共同実施が必要になることを書いた。当時、長野県では共同実施はタブーだった。変なこと考える奴だと思われていたと思う。)

⑥長野県の学校事務を時間軸と空間軸で考えてみよう。そう思った。

 時間軸はもちろん長野県の小中学校に事務職員が配置されてから現在までとこれからの未来について。空間軸は「学校という点での学校事務」と「共同学校事務室という面での学校事務」のことだ。プレゼンの題は「持続可能な学校事務とは何か ー2050年の長野県の学校事務」とした。新人学校事務職員たちが30年後に働いているであろう学校事務の世界と、小中学校事務職員という制度がおそらく続いている、というのを想定してみた。内容は次のとおりだ。新採学校事務職員のプレゼンで作ったパワーポイントを再利用しようと考えていたが、ぜんぜん違うものになった。

 

⑦「持続可能な学校事務とは何か ー2050年の長野県の学校事務」(90分)

1はじめに 

・講演テーマ:学校事務を「時間軸」と「空間軸」で考える

・ワークショップ:子どもたちとのコミュニケーションの方法例(パンダの絵)

2学校事務の現在

・M大学での講義から(実は子どもたちの記憶に残る学校事務職員の仕事)

・職業アイデンティティ(事務職員の役割と憲法26条)

・必読図書の紹介3冊

 学事出版『新・教育の制度と経営(三訂版)』

 有斐閣『教育格差の社会学

 岩波ジュニア新書『正しいパンツのたたみ方』

3学校事務の過去

・顧客の発見(「研究基本要領」から「組織マネジメント」へ)

形式知暗黙知(学習する事務研ブロック組織とOJT研修の必要性)

4学校事務の未来

少子化時代の学校(学校事務職員も地域の教育を考える時代に)

・仕事をシエアする(「一人でする仕事」と「みんなでする仕事」)

5おわりに(学校事務の空間)

・持続可能な学校事務とは何か(社会が変わる、共同学校事務室を考える)

・未来に種を蒔く(「研究基本要領」から50年、次のビジョンを)

 

⑧このプレゼンは、最初ビデオ録画したものをオンライン配信するということで、県事研の研修部長さんの学校を使用してビデオカメラの前で夏休みに録画された。しかし、私が話す映像を90分も見せられてはさすがに嫌だろうし、説明に使用するスライドも、うまくいかないので、研修部長さんにはお手数をおかけしお世話になったがこの録画は未使用となった。お蔵入りとさせていただいたのだ。

⑨結局、私は自宅でパワーポイントで作成したスライドを基本に、大きな項目の所で顔を出すことにして、それ以外は講演内容スライドごとに音声だけを載せることにした。完成したパワーポイントを研修部長さんに渡し、研修部長さんはチェックして、ユーチューブに期間限定で事務研会員のみに公開した。

⑩この講演の評価は私にはわからない。果たしてみんなの参考になったのか。後日、会員の感想の声をいただいたが、それは6時限目「正規分布曲線分析」で書いたように、この講演を観た会員の15%の好意的な声だと考えている。当然、その反対の15%の声があるはずだ。その声が聞きたいというのが正直なところだ。講演の中で事務研や学校事務職員の皆さんに様々な提案をしている。議論を巻き起こしてほしい。私なりの議論の種を蒔いたつもりだ。

その時のスライドはこちら

2021年長野県事務研 研修大会講演スライド - 2050年の長野県の学校事務 (hatenadiary.com)