アップデートする学校事務職員

2050年学校事務職員への伝言

16時限目:アップデートする学校事務職員:新採学校事務職員へプレゼンする

 16時限目は、学校事務職員に採用された新人へのプレゼンです。

①長野県の小中学校事務職員は採用されると大規模校県費2人校へ赴任します。ここで1年間先輩事務職員からOJTを受けます。先輩事務職員から仕事の仕方や心構えなどを実務をとおして学んでいきます。

②2020年、県教委の新規採用事務職員の「現任1部研修」という新採者研修で「学校事務職員の役割」について話してほしいと依頼を受けました。今回はその時のプレゼンの話しです。

③実は、この「現任1部」研修会について、私は県教委に手紙を出しました。「M大学で学生に学校事務の講義をしている。このM大学の講義の内容を新規採用者にも話したほうが良いのでは、と現場の学校事務職員から助言をもらったので、県教委に可能かどうかお聞きしたい。」という手紙です。

④私は、2018年、M大学での講義内容が適正なのかを確認するために、新規採用2年目の事務職員が多い木曽事務研へ「研修会で話すことは可能か」打診してみました。冬期研修会で話してほしいという回答をいただき、M大学での学校事務の講義を木曽地区の現職事務職員にしたのです。

⑤その時の感想で、「この話は学校事務職員になったときに、あるいは学校事務職員を2年か3年経験したときに聞くと、よく理解できる」と言われました。確かに、「学校事務」というものが可視化できない学生には遠い話しかもしれないと思いました。

⑥2019年に須坂の事務研から「学校事務職員のプレゼンの技術ー事務室からの情報発信」について話してほしいという依頼があったので、M大学での講義を含めて話しました。退職した者からすると現場の事務職員からの感想や助言は参考になります。

⑦M大学での講義をメインに、新人である事務職員にむけてどのようにアレンジすればよいのか考えました。学生とは違う何かが必要です。

⑧新人事務職員はすでに学校現場で仕事を行っており、先輩事務職員から様々なことを教わっているはずです。この新人へのOJTは1990年の大規模校県費複数配置が始まってから30年は経過しています。

⑨90年代当初、どのように新人を育成するかという会議が新人を育成する先輩事務職員たちの全県会議が何回か行われています。その時の「育成マニュアル」が全県で情報共有されていないので私にはどのような内容なのか知る由もありません。OJTを受けた学校事務職員が異動によって一人校へ赴任してみて、大変困った、という話を聞いています。それはこの時のOJTが県費の仕事(教職員関係の事務中心)がほとんどで、学校事務の基本である学校予算のことについては何も教えてもらえなかった、というのです。

⑩これは無理もない話で、大規模校には県費事務職員だけでなく市費事務職員も地方交付税基準で配置されており、事務室の仕事分担が縦割りだった学校が多かったためです。県費事務職員は県費(給与・旅費など)の仕事、市費事務職員は市費(学校予算・就学援助など)の仕事、という事務室内の事務分担が固定的だったことが原因でした。

⑪それでも新人事務職員に対して市費事務職員から学校予算の運営の仕方などをレクチャーすることはできたはずです。それもされかったということは、先輩事務職員の事務室運営に問題があったということになります。

⑫私は新人事務職員に次のようなプレゼンをしました。

「学校事務職員の役割」90分

1学校事務職員の現在(学校の法律 憲法から始まる学校事務)(学校の一日)

2学校事務職員の過去(学校事務職員の配置の歴史)(職務内容と時代変化)

3学校事務職員の未来(思考する学校事務)(行動する学校事務)

4学校事務職員の役割(教育現場を支える仕事)(地域の期待に応える)

 

⑬1学校事務職員の現在 では、

 私たちは公務員だから、法律で様々なことが決められていること。特に憲法26条を仕事の基本においてそれを忘れないということ。学校教育法で、学校には事務職員を置かなければならないこと、事務職員は学校事務を司る(責任者)ことが法律で決められていることを話し、そしていつか必ず考えることになる根源的なテーマ、難しいけれど「事務職員が学校にいる意味」を考えてみることについて話しました。意味を考える前につぎのような質問をしました。

Q1:あなたは学校という職場を好きになれるか?

Q2:あなたは子どもたちの声を聴くことができるか?

Q3:あなたは教育と社会の現実を見ることができるか?

⑭教育現場で仕事をしながら時々考えて、自分の仕事を問い直すことはとても大事なことだと話しました。そして「学校の一日」(これはM大学で使用したスライドを一部利用)の中で社会人としてのマナーをもう一度確認しました。

マナー1:TPOに合わせた服装、学校でサンダルは不可(非常時対応のため)

マナー2:出勤時退勤時は必ずあいさつ「おはようございます」「お先に失礼します」

マナー3:勤務時間外も公務員自覚必要、事務職員も教育関係者(新聞に名前が出る) 

⑮2学校事務職員の過去 では、

 法的な配置の歴史と配置数について話し、少子化で学校の統廃合などがあり学校事務職員数も減っていること、職務内容も「昭和アナログ時代の学校事務」と「平成デジタル時代の学校事務」と変化していること。今は「令和クラウド時代」で学校事務職員の職務内容も役割も大きく変わってきていることを話し、特に「教育支援的事務」という概念が必要になってきていることを話した。

⑯3学校事務職員の未来 では、

 「思考する学校事務」Why(なぜ)とHow(方法) について話した。仕事の基本となる学校事務能力を仕事をしながら自己啓発していきたいこと。学校事務職員としての知識、技能、態度を養っていくことが必要で、こういったことはどんな仕事どんな職場でも必要とされていること。小中学校事務職員は学校専任の事務職員なので、特に教育関係法令については熟知したい。役所の行政職員は部署が変わるたびに関係法令が変わることを考えれば、学校事務職員が関係する教育関係法令は『必携』1冊なので何年かかっても良いから読破してみよう。仕事をする中で疑問がわいたら考える習慣をつけよう。例えば、教材備品購入予算が100万円あったら、どのように予算を有効に使えるのか?慣例で、教科ごとに前年度並みで配分するのか?その配分に根拠はあるのか?もっと有効な配分方法はないのか?などだ。

⑰「行動する学校事務」は、デスクの前に座っているだけでなく、1日1回は校舎内を歩くこと。犬と猫、どちらが好きですか?と聞く。犬が好きなら、校舎内のポイントポイントでマーキングして歩く。猫が好きなら、校舎内でお気に入りのエリアをテリトリーにしてみる。学校事務職員からみて学校に関係のある人を大事にしたい。1児童生徒 2教職員 3教育委員会、教育事務所 4教材業者、地域住民  学校事務は見えないところで助けられていることがあるので、気を付けて応対したいと話した。

⑱4学校事務職員の役割 では、

「教育現場を支える」で、どういった学校事務職員になりたいのかイメージすること、学校事務という仕事が教育現場をどのように支えているのか考えてみたい。

「地域の期待に応える」には学校事務職員のミッション(使命)を意識しそれに沿って仕事をすれば期待に応えていることになるのではないかと話す。学校は地域の教育施設で、その学校に通う子どもたちは「未来の希望」だということを、教職員も保護者も地域住民も共通の願いとして持っている。平和で安心で安全な学校を作っていくことだと話した。

⑲みんな、まじめに聞いていた。この大規模校でのOJTが終わったら、来年は一人校へ赴任して、自分で学校事務をマネジメントすることになる。そこから本当の学校事務事務職員としての仕事が始まる。がんばってほしい。学校事務は楽しい仕事だ。その楽しさが分かるまで時間がかかるかもしれない。とまとめた。

⑳このプレゼンで大きく反省したことがある。それは、県教委との連絡不足だ。私のミスでもある。ちょっと残念だった。こちらの実力不足で新採者に悪いことをしたと反省。

・開催期日の延長で内容ミス コロナ禍となり5月開催が10月開催となった。プレゼン内容を当初採用2か月目という設定で組み立てたが、コロナの感染状況を見て場合によっては研修会中止もあると言われた。後日10月開催するという連絡を受け、採用6か月目の事務職員という設定に内容を修正する必要があったので、修正を行ったがいまいちだった。

・日程確認ミス 当初120分と言われて準備したが当日90分だった。送られてきた開催要項をみると90分だった。直前まで気付かなかった。時間調整に何を削るか、判断する。できるだけ参加型の研修会にしたかったが、ちょっとできなかった。 

・研修会内の他の研修内容の確認ミス 1日研修で、私の出番は午後1番だった。午後来てくださいと言われたが、朝から他の講師がどういった内容の講義をするのか聞くべきだった。話す内容が被らないようにしたつもりだったが、一部被ってしまったことが後で判明した。私はいつも「自分が聞く立場だったら」と考えて話をする。同じような話を何回も聞かされる方はたまらない。

・講義スライドを印刷しないでよいと言ったミス 私のスライドは60枚くらいあったので、経費削減と職員の負担軽減を考えて資料の印刷はなくてもいいですと言ったのが間違いだった。講義を聞くには聞くが後で資料を読みたいというのも事実だ。資料の必要な新採事務職員は私宛にメールを送ってくれたらそこへ資料を添付して返信しますと講義の最後に連絡した。資料が大量であっても印刷をお願いすべきだった。■