11時限目は、自分をアップデートさせるための「考え方」のひとつ。NEED/WANTマトリックス表について書いてみたい。こういったマトリクス表は縦軸と横軸で「気になるキーワード」を入れて、複合的に考えてみることができる。思考実験できるので、マトリクス表を使って仕事について考えてみてほしい。
①10時限目で組合事務職員部の講演で話した「未来年表」のことを書いた。
その講演で「学校事務のマネジメント」について話した。話をしたこの地域は、ご多分に漏れず、人口減少は続いており、当然児童生徒数も減っている。学校の統廃合もすすむ。そして、各学校に赴任し勤務する学校事務職員は2極化していた。ベテラン層と新人層だ。
②この地域には新人層が多い。3時限目の「人材育成の失敗」の中で、新人は採用1年目に大規模校でOJT研修を受ける、と書いた。OJT研修の翌年、中山間地の小規模学校へ赴任する。採用2年目から勝負だ。学校事務の全体像と学校事務職員の勤務態度や職業倫理を先輩事務職員から教わったはずだ。だが、様々な体験を積まないと一人前の学校事務職員にはなれない。1年のOJT研修では足らないのだ。この「現場に一人の学校事務職員」という状況を理解するには3年はかかるだろう。学校事務の要である「ヒト・モノ・カネ・情報」の経営要素を自分がコントロールする、コントロールできることを実践していかなければならない。これができないと、ただただ「事務処理をするだけの事務員レベル(事務職員ではない)」のままになってしまう。
③「学校事務のマネジメント」の中で次のような話をした。「Need/Wantマトリクス」で常に自分の仕事を確認していこう。ホワイトボードにマトリクスを書く。
縦軸にNeed(社会・組織)必要な仕事(必要とされている・されていない)
横軸にWant(自分)の気持ち(やりたい・やりたくない)
のマトリクス表で四つの象限を作成し確認する。
④新人の頃は、とりあえず仕事を覚えて仕事をこなすという段階。これはこのマトリクス表の左下の「ライ・ワーク(仮そめの仕事)」の状態。自分にとってこれからも続けていく仕事なのかどうか迷っている段階。多くの人は就職してこの段階から始まる。この状態を超えると、ここから二つの方向に向かう。
「ライス・ワーク(ごはんための仕事)」仕事は好きじゃないけど給料もらうためにこの仕事をしています。という状態。
「ライク・ワーク(好きな仕事だけど自分の世界の仕事)」仕事は好きだけど組織の中で期待される仕事をしていない。という状態。
⑤この状態から抜け出して、本当にこの仕事が好きで、面白くて、組織の中でも「やっぱり学校事務職員がいないと学校はまわっていかないようなあ」と言われるくらい、重要な意味を持つ仕事「ライフ・ワーク」にたどりつくことができたら、うれしい。
⑥学校事務という仕事は、自己裁量の大きい仕事で、学校事務職員の意思次第でどうにでもなる仕事(法令の範囲内でという意味)。書類作成だけの仕事で終わってはいけないと私は思う。という話をした。利害関係者(ステークホルダー)との関りが仕事の面白さを倍増させる。その段階へ踏み出せたら、「自分はアップデートできた」と思っていい。
⑦新人層は独り立ちした後、先輩事務職員がどんな仕事をしているか、もう一度OJT研修受けると、学校事務がどんなものかよくわかるはず。だけどそういった制度がないので、自分で積極的に先輩事務職員と関わるといい。
⑧ところがこの地区は「共同学校事務室」が発足したのだ。県教委からみんなに兼務命令が出ているので、お互いにそれぞれの学校へ出かけて「共同」だけではなく「協働」してもいいんじゃないのかと思う。他の地区の新人層たちにはできないことが、この地域だと2度目のOJT研修ができるのだ。
⑨でも、話を聞くとなかなかそれはできないらしい。
共同学校事務室の室長は加配職員なので、地域内の新人(初めての一人校勤務)の学校へ時々、相談や指導で出かけているという。若い新人が、気軽に先輩に仕事を教えに来てとは言えない。確かにそうだ。
⑩A村のB小学校とC中学校。お互いに兼務命令が発令されているので、先輩と新人で打ち合わせ会議を設定して、月一回でもいいからお互いの学校で一緒に仕事をして、コミュニケーションを深めていくといいかもしれない。予算編成の時期になったら、どうやって予算編成するか、お互いに相談し合えたらいい。諸手当認定や旅費精算はお互いに書類を見合っていると思う。もう一歩踏み出して、何でも相談し合える関係にレベルアップしたい。そうすると、A村の学校教育全体が、少なくと学校事務分野は良くなっていくんではないか。
⑪立場が人を育てる、という言葉がある。
新人よりも1年でも2年でも先輩なら、そのA村の先輩事務職員ならリーダーシップをとってみよう。やり方が分からなかったら、室長を呼ぶか、となり町の先輩事務職員に相談する。そういうネットワークがいい効果を生むように思う。そういったことを地域に情報公開して共有化する。地域の共同学校事務室がプラットフォームの役割をして、A村の実践を公開してそれをE町でもやってみるとかF市でもやってみるかとか、広がっていく可能性がある。
⑫自分の勤務する学校にタコつぼのように閉じこもって、自己満足の学校事務を実践することがないようにしたい。30代の私は、当時とがっていて自己満足の学校事務で、勤務する学校の多くの教職員にかなり迷惑をかけていたことを思い出す。過去は変えられない。私の頃にもOJT研修があれば、もう少し丸い人間になったのにと思う。■