①いよいよ21時限目となってしまった。このブログもそろそろ終わりにしようと考えている。私はすでに現職の学校事務職員ではないし、ましてや学者や研究者でもないので、ここらあたりで終わりにするのがいいように思う。
②21時限目のテーマは「知識創造スパイラル」だ。
人工知能問題が出たときに、学校事務職員という仕事は無くなるだろう、と予想された。それでなくても、少子高齢化で、子どもは減っており、高齢者も寿命を全うして自然減となっていく。人口は減り続け、経済も縮小社会へと向かうのだろう。学校数(学級数で算定されるが)に基づく学校事務職員数は、学校が統廃合になれば減少することは容易に想像できる。
では人工知能問題でも、教員は残る仕事なのか?そもそも、学校は残るのか?ネット社会になって、本物の教員がいなくても、アバターのようなバーチャル教員がディスプレイの向こうで授業することも可能になっている。子どもを学校という施設に集めなくても知識の伝授という教育は可能だ。そうすれば「いじめ」もなくなる。「不登校」という考え方さえも無くなってしまうのだ。SF的には可能な社会に向かっている。
でも、と思う。人間という生物は集団生活をする動物だ。教育という営みはネット社会の中にあるのではなく、リアルな人間集団の中で大きな効果を発揮させることが可能なんだろうと、個人的に思う。
③さて、話は「知識創造スパイラル」だ。私がこのことを知ったのは1998年。一橋大学の野中郁次郎教授が経営学の中で提案されたアイデアだ。(経営学の本の中で読んだ。すごいアイデアに感動した)。
野中教授は、日本的経営が何故日本企業の発展に役立ってきたのかを研究してきた。それは、個人のアイデアや知識経験が、グループで話し合われて大きな知識となり、それが大きな組織の知識となって蓄積され、そこにまた個人のアイデアが共有化されてという正の上昇スパイラルがあることを明らかにされたのだ。
④知識は「形式知」と「暗黙知」に分けられる。「形式知」はマニュアルなどだ。例えば、長野県の学校事務研究会で作成された「学校事務指導書」などだ。これは誰が読んでも平等に知識として共有できる「形式知」だ。ところが「暗黙知」は言語や文章では表現が難しい個人的なノウハウのようなものだ。
⑤学校事務で考えてみよう。仕事の分類や書類の書き方や法令などの「知識(形式知)」と学校事務職員がそれぞれの学校で現場に合わせて行ってきた「知識(暗黙知)」がある。「知識(形式知)」は事務研などで統合されて文字化されてきたが「知識(暗黙知)」は文字化されてきていない。
⑥野中教授は「形式知」と「暗黙知」の相互作用が組織を発展させるとし、それは次のようなスパイラルだとした。
1「共同化作用」とは、
個人の「暗黙知」を他者が共有していく(先輩と後輩:個)
2「表出化作用」とは、
3「連結化作用」とは、
4「内面化作用」とは、
1へ戻る(1から4へと繰り返す相互作用)
⑦知識や知恵は、人から人へ、集団から集団へ、というのが集団生活する人間の学びの基本なんだろう。「共同学校事務室」が目指すのはこの「知識創造スパイラル」なんだと思う。
⑧学校で、一人配置の学校事務職員として悩んだ時に、職場で相談する先輩事務職員もいない状況の中、「こういった時に、あの先輩ならどうするのだろうか」と思ったことがある。相談する相手がいないのだ。これは経験年数に関係なく、いくつになっても「学校に一人しかいないこと」に学校事務職員の大きな弱点があることを私は知った。しかし、やがてそのことに慣れてしまい、何でも自分で決めて、自分の好きなように仕事を進めていくことになり、やがて誰のための仕事なのかも忘れてしまい、自分の都合だけを優先した学校事務の日々があったことは私は忘れない。私の学校事務職員としての闇の歴史だ。
⑨学校事務職員として退職する年齢となり、最後のお勤めする学校へ赴任したときに、自分が学んできた知識(形式知と暗黙知)を生かして終わりにしたいと考えていた。
勤務する学校を分析する。この学校で私の「学校事務知」はどのように活用すればよいのだろうか。そして、自分がこの学校を去った時に後任の事務職員が困らないように、この学校のシステムを切り替えていきたい。そう強く思った。
⑩「組織マネジメント」それは仕事をする誰もが幸せになるようなマネジメントを学校事務職員サイドから提案していきたいと考え、最初に行ったことは、「この学校の大量の事務を1人でどのようにしてきているか」を明らかにすることだった。「学校事務の見える化」だ。教員も忙しいかもしれないが、こちらも忙しい。本校と分校の2校分の仕事を1人で行っているのだから。まず、身内の教職員にこの学校の学校事務の大変さを認知してもらいたいと考えた。1,事務職員が抱える書類の見える化。2,毎日の仕事のスケジューリングをホワイトボードに書いて、職員に見える化。3,年度末に学校事務の総まとめで仕事の数値化(数値で見せる化)。そうすると、翌年、校務分掌から仕事が減っていった。「大変たいへん」と愚痴を言っても始まらないのだ。何がどれくらい大変なのかを周知しないと、相手は認識しない。
⑪退職時に他郡市の組合事務職員部から学習会に招かれた。そこで話してほしいと依頼された内容は、「これからの学校事務をどう考えるか」というテーマだった。60分で「組織マネジメント」のエッセンスのような話をしてみた。参考になったのかどうか、わからない。■
その時のスライドがこちら。
2016年「これからの学校事務をどう考えるかー組織マネジメント的な考え方を利用して」 - 学校事務職員Hの仕事(1997~2016) (hatenablog.com)